アクセス解析 お狗様と一緒。日記 駄犬は異邦人


駄犬は異邦人

2008.04.17(22:40)
 こんばんは、皆様。解けたり降ったりの雪も、多分もう降るまいと思える管理人です。でも、風が冷たく昼間でも寒いです。

 今夜の殺りんは駄犬シリーズの田舎編の続きです。宮廷編とどっちにしようか考えて、今夜はこちらにしました。仲良くなると良いな…本当に。
 でも、此処までと決めていた場所まで、打てませんでした。眠さに負けました。
 そして、コメント有り難う御座います。拍手も有り難う御座いました。
 では、どうぞ。



 雪かき用のシャベルを片手に、少女が空を仰いでいる。真っ青な青空は夏の海のように綺麗で、それ以上に澄んで見えた。
「あと少しか……」
 呟きの言葉と共に、吐き出される息の色は白。昨晩から今朝方まで降り積もった雪を、彼女は取り除いているのである。裏玄関と表玄関はもう終えたので、現在は車庫の前。
 ここも、もうすぐ終わるだろう。フリースの手袋がプラスチック製のシャベルを握りしめ、また雪を遠くへ飛ばす。
 父親が朝早くに大型の機械を使い、大雑把に除雪してしまったので、手作業する箇所は少ない。時間にして云えば、40分程度。
 りんは赤い格子の綿入り半纏(はんてん)を着、ひたすら雪をかいていく。昨年まではこの手伝いは兄の仕事だった。しかしその長兄も結婚し、今では町にある町営住宅で頑張っている筈である。
「よっしゃぁぁ!!」
 最後の雪を遠くの雪山へ飛ばし、作業終了。りんは除雪の道具を肩に掛け、家へと向かう。
 どこもかしこも雪に覆われた銀世界で、彼女の赤い半纏は大変目立っていた。しかも足下は同じ赤いゴム長靴で、帽子こそ無いがあまりお洒落とは云えない格好。むしろダサイを絵に描いたようだった。
 寒さで赤くなった頬といい、服装のセンスといい、何処から見てもりっぱな田舎娘。それでも誰かが見る訳でも無し。
 町中と違いこの辺りで隣近所と云えば、一キロ以上先を指す。辺りを見回しても、防風林か雪か電柱か、道路を走る車ぐらい。他は一切無い。
「ただいまー」
 冬休みに入ってからの日課を終えて、りんは台所の母の様子を見る。もうすぐ年の暮れで、昨日も掃除に大わらわ。さっきも父にワックスの買い足しを頼んだばかり。
 クリスマスが終わったと思ったら、すぐにお正月だ。本当に師走は忙しい月である。
「それ、お正月の鏡餅?」
「うん、毎年作ってるでしょう。今年はちょっと遅くなっちゃって……」
 母は丁度、餅つき器から出来たてのお餅を取り出している所だった。ダイニングテーブに敷物を置き、そこにどうやら広げるらしい。澱粉が既にまかれ、真っ白な様は外の景色と同じ。
 毎年の事とはいえ、相変わらず熱そうである。杵と臼で突いた物よりも、機械で作ったお餅の方が滅茶苦茶熱い。りんも昔子供の頃、母の後をついて回りお餅作りもしたが、火傷しそうに熱かったのを思い出す。
「お母さん、ちょっとこれ味見しても良い?」
 そういえば、仕方がないわねという顔で母が木べらで大福程度の大きさを、切り分けてくれる。
「お行儀が悪いから、りん、立って食べちゃ駄目よ! 座って食べなさい」
「はーい」
 昔から変わらない小言を背中で聞きながら、りんは餅入りの小皿を手にリビングへ。否、母にばれないよう二階へ上がる。
 折角なので、あの駄犬にも食べさせてあげようと思ったのである。



 りんにとって、殺生丸は『異邦人』だった。
 呪いという非現実的なものをあまり信じてはいないりんでも、目の前で起こった事ならば信じざるを得ない。しかも本人が自らを王子だというならば、王子という事で良いとも思う。殺生丸に『様』が付くのは、このためだ。
 大体確かめる術もないので、反対しても埒があかない。だから彼は王子様で良しとした。
「殺生丸様……?」
 部屋に入るなり、りんは小声でペットを…もとい彼を呼ぶ。
 家族の間では『シロちゃん』の王子も、二人の間では『殺生丸様』である。そして、彼女の部屋に彼の寝床があった。
「…殺生丸様、お餅持ってきたんだけど…食べる?」
 りんが思う限り、殺生丸の世界という場所はヨーロッパ風なのだろう。時代は近世も後期あたりかなと予測している。いや全く違うかもしれないが、ギロチンの露へと消えた王妃様の時代に近い感じがするのだ。
 上下水道があるのかとか、瀉血(しゃけつ)がまだ通用してるのかとか、王権は絶対なのか立憲なのかはたまた専制なのかも気になるが、とりあえずお餅は食べた事がないだろう。
 大掃除がまだ終わらない彼女の部屋、しかもベットの近くの籠の中に彼はいた。呪いのせいで、満月の晩のみ人の姿に戻れる殺生丸は、普段は小型犬姿。チワワにも似た愛くるしい外見をしている。
 だから、今も籠の中に大人しく佇む彼は、半端なく可愛いワンコ。垂れた耳がりんの良く知るチワワとは違うが、愛玩動物としては百点満点の容姿だろう。

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コメント
 こんにちは、つみさかさ
 王子様、餅に挑戦なのですね。漱石の「猫」のようにのどに詰まらせて大騒ぎにならないといいけど。
 ものを考えているときのりんちゃんの知識量ってどのくらいなんでしょう。読書量けっこうありそうです。
【2008/04/18 20:54】 | おーたむぽいんと #HuBhO90w | [edit]
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