その名はイヌレンジャー3
2008.06.29(22:33)
こんばんは、皆様。管理人です。あらすじでさくさく進むことにしたイヌレンジャーの続きを、折角なのでまた乗せてみました。
あらすじ過ぎて萌えすらないのですが、そこら辺は個人の妄想パワーにお任せします。
コメントのお返事は…明日。明日、必ずします、お待たせしてすみません。
いつものゆるい坂道を登りながら、りんは家路についていた。
今日はアルバイトが休みである。だから、何となくまだ外が明るい。夏至が近い為か日も長く、帰宅の遅いりんにとっては街灯代わり。夕焼けを背に、住宅街からかなり外れた道を歩き続ける。
両親が亡くなってから、りんの生活はかなり質素になった。それでも、マイホームとかいうのがあるだけ、ましかもしれない。それが崖の近くで、人気のない道を通らなくてはならないような、ちょっとした林の中ほどだとしても…だ。
最初見た時は、テーマパークの催し物関係の人か、何か特殊なイベントかバンドか、などなどと頭に過ぎった。仕事か趣味のどちらかとはいえご苦労様だと、のぞき込んだ。
初めて見る相手の容姿は、絵本で見た人魚の王子様の如く真っさらで、白い顔。それが血の気の失せた白皙だと気が付くのに、りんはやや暫くかかった。何しろ、睫は長いし、肌は綺麗だし、眉間の縦皺が余計だが、文句なしの顔立ちだったからだ。
思わず手を伸ばし、その余計な皺を伸ばそうとした時だろう。
いきなり吠えられた。
怒鳴られたではない、吠えられた――だ。
人の声よりは獣のに近い、何と形容したらいいのだろう。猫よりは犬系な感じである。吃驚したのもつかの間、噛み付き寸前の獣は、すぐに呻き声に変え、瞼がおちる。
一瞬見てしまった、見た事のない金色の双眸にぼーっとしたりんだったが、すぐにハッとする。
彼は怪我をしているのだ。あれは、偽物ではない、本物の血痕なのだろう。再び手を伸ばした時は、完全に気を失っているのか。彼は目を覚まさない。りんは引きずってでもと思ったんだが、結局諦め、家まで猛ダッシュ。急いでリヤカーを引きずって戻ってくる。
その時、ペットのように銀色の黒騎士の側に、双頭の生き物がいたとりんは初めて気が付いた。
「ビール瓶のラベルみたいな、格好ね」
そんな生き物を見ながら、それでも動じることなく彼女は男を引きずり、リヤカーの荷台へ運ぶ。あとはもう、夕暮れ過ぎた黄昏時を真っ直ぐ家路にむかうだけだった。
庭の方から、リビングへ運び込んだ鎧姿の男性は、やっぱりまだ目を覚まさず、りんは濡れたタオルであちこち汚れを落としていた。土砂か何か煤なのか、良く分からない汚れを落とすと、相手はより一層輝いて見える。
それから救急箱を持ってきて、手当にかかるのだが……困った事に、鎧が邪魔。押しても引いても、叩いても、装着品は取れない。脱がす事が出来ないのだ。
「どうしよう……」
とりあえず、見える部分だけでもとあたふたしている内に、相手の瞳が瞬きを繰りかえす。
「……触るな」
それが、彼の第一声。人間らしい初めての言葉だった。
結局許可だけは何とか取り付けたりんは、装着を外した相手を思う存分薬とガーゼと包帯を使って治療する。その後、夕食を勧めるのだが、そちらは空振り、無視無視無視の三拍子。重い沈黙だけが横たわる。
仕方がないので、怪我で発熱すると苦しいだろうと、解熱剤と水とを枕元に。そうして、挨拶をすると彼女も眠りについた。
翌朝、残されたのは血痕が染みついた布団一式と、空になったコップと、手つかずの薬だけ。
ビール瓶のラベルそっくりの双頭の生き物も、白皙の男も誰もいない。
「これ……どうしよう…」
粗大ゴミで出して、警察あたりに職務質問されたくはない。
血の染みべったりの布団処理に、とっても困り果てるりんだった。